米TechSpotが11月2日に公表した10か国のグラフィックスカード価格調査によると、10月の価格は前月比11%上昇した。各国・各モデルで在庫のある製品の最安値を調べたもので、米国のRTX 5090は9,400ドルに達し、発売時のメーカー希望小売価格(MSRP)である1,999ドルの約4.7倍となった。価格高騰の背景にはメモリ価格の上昇があるものの、それだけでは説明できない差も見られる。同じ16GB GDDR7を搭載するGeForce 3機種でも、米国の最安値がMSRPを上回る金額は361〜1,201ドルと大きく異なる。本記事ではTechSpotの調査データを基に、メモリ原価以外の要因が価格にどの程度影響している可能性があるのかを検証する。

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10月のGPU価格は前月比11%上昇、RTX 5090は米国で9,400ドルに

TechSpotは米国、英国、インドなど10か国を対象に、価格比較サイトで各モデルの最安値を調べ、購入可能な在庫があることを確認して集計している。市場全体の平均販売価格ではなく、各モデルで最も安く購入できる製品の価格が基準だ。米ドル建てMSRPを為替レートと税率に基づいて現地通貨に換算し、店頭の最安値が何%上回るかを算出している。

この方法で集計した10月のGPU価格は前月比11%上昇し、8月からの3か月間では35%値上がりした。全モデル・全10か国の平均では、店頭の最安値がMSRPを44%上回っている。ただし、上昇幅はモデルによって大きく異なり、米国ではRTX 5060 Ti 8GBがMSRP比+40%、RTX 5080が+120%、RTX 5090が+370%となった。一方、RTX 5060 Ti 16GBも+84%、RTX 5050は+69%で、単純に性能が高い製品ほど上昇率が大きいわけではない。

特に極端なのがRTX 5090だ。米国の最安値は2月の3,500ドルから9月に6,890ドル、10月には9,400ドルへ上昇した。10月の前月比上昇率は米国で36%、10か国平均でも32%に達し、10か国平均の価格はMSRPを262%上回った。2月の時点ですでにMSRPの1.75倍であり、価格高騰は以前から続いていたことが分かる。

RTX 5090を巡っては生産終了を伝える報道も出ていたが、NVIDIAで個人向けコンピューティングを担当する上級副社長のJeff Fisherは、台北で開催された「RTX Spark Launch Party」後の取材で、同製品の生産と出荷を継続していると説明した。台湾の4Gamersが10月16日に報じたところによると、FisherはRTX 5090のチップにはほかのバリエーションもあると述べる一方、供給網の生産能力が「確かにやや制約されている」ことも認めた。こうした供給制約も価格に影響している可能性があるが、その程度は明らかになっていない。

同じ16GB GDDR7でも、MSRP超過額は361〜1,201ドルと大きな差

メモリ価格の上昇圧力が強まっていること自体は確かだ。調査会社TrendForceは9月30日、GDDR6ではメーカーが減産や供給からの撤退を進め、GDDR7でも先端プロセスの生産能力がサーバー向けDRAMなどに振り向けられているため、供給が制約されていると分析した。同社はグラフィックス用DRAMの価格上昇が続くと予測している。

では、メモリ価格の上昇はグラフィックスカードの販売価格にどの程度影響するのか。メモリ原価は主に種類と容量によって決まるため、同じ16GB GDDR7を搭載する製品であれば、GPUの性能が異なっていても原価の増加額は近いと仮定できる。ただし、ここではメモリの速度グレードの違いは考慮していない。そこで、上昇率ではなく、米国における2026年10月の最安値から発売時のMSRPを差し引いた金額を比較する。

TechSpotの価格表とNVIDIAが発表したMSRPから計算すると、16GB GDDR7を搭載するGeForce 3機種の価格差は以下のようになる。

機種 米国10月の最安値 発売時のMSRP MSRP超過額 MSRP比
RTX 5060 Ti 16GB 790ドル 429ドル 361ドル +84%
RTX 5070 Ti 1,250ドル 749ドル 501ドル +67%
RTX 5080 2,200ドル 999ドル 1,201ドル +120%

同じ16GB GDDR7でも、MSRP超過額は上位モデルほど大きい。RTX 5070 TiはRTX 5060 Ti 16GBより140ドル、RTX 5080は840ドルも大きくなっている。メモリ原価の上昇額が3機種でほぼ同じなら、この差にはメモリ以外の要因が相当程度含まれていると考えられる。ただし、GPUダイや基板、電源回路、冷却機構などの原価も異なるため、差額のすべてをメモリ以外の価格上乗せとみなすことはできない。

10か国平均でも同様の傾向が見られる。TechSpotが各国の価格を米ドルに換算した結果では、RTX 5060 Ti 16GBのMSRP超過額は約300ドル、RTX 5070 Tiは約450ドル、RTX 5080は約770ドルだった。特にRTX 5060 Ti 16GBとRTX 5070 Tiは同じ速度の16GB GDDR7を搭載しているにもかかわらず、約150ドルの差がある。TechSpotもこの点を指摘し、価格上昇のすべてをメモリ原価の増加だけで説明することはできないと分析している。

RTX 5080の価格変動は特に大きい。米国の最安値は9月の1,580ドルから10月には2,200ドルへと39%上昇し、10か国平均でも前月比22%の値上がりとなった。ただし、調査時点で米Neweggには直販在庫がなく、高値を付けた第三者出品者の商品しか残っていなかった。TechSpotはこれを米国での急激な価格上昇の一因とみており、2,200ドルという数字にはマーケットプレイス特有の高値が反映されている可能性がある。

TechSpotはRTX 5080の価格上昇について、「これはメモリ価格の上昇によるものではない」(原文:"This is not due to memory price increases, plain and simple.")と指摘している。16GB GDDR7の原価自体が700ドルも上昇したわけではないとし、便乗値上げ、AI用途での需要、RTX 5090の入手難を要因の候補に挙げた。ただし、それぞれの影響の大きさは明らかになっていない。

さらに同誌は、小売業界の関係者の話として、RTX 5080の卸売価格がここ数週間で大幅に上昇しており、店頭価格もさらに上がる見込みだと伝えている。16GB版を置き換える24GB版が2027年初めに登場するという噂にも触れているが、こちらは未確認の情報だ。

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8GB版と16GB版の価格差はGeForceでより大きく拡大

同じGPUを採用し、メモリ容量だけが異なる製品を比較すると、別の傾向も見えてくる。RTX 5060 Tiの8GB版と16GB版は発売時の価格差が50ドルで、AMDのRX 9060 XTも8GB版と16GB版の価格差は50ドルだった。しかし、10月の米国最安値では、その差がRTX 5060 Tiで260ドル、RX 9060 XTで120ドルに広がっている。なお、AMDの発売時価格は同社が想定販売価格(SEP)として発表したもので、TechSpotはMSRPとして扱っている。

TechSpotの調査結果と各製品の発売時価格からMSRP超過額を計算すると、以下のようになる。

機種 メモリ 米国10月の最安値 発売時のMSRP MSRP超過額
RTX 5060 Ti 8GB 8GB GDDR7 530ドル 379ドル 151ドル
RTX 5060 Ti 16GB 16GB GDDR7 790ドル 429ドル 361ドル
RX 9060 XT 8GB 8GB GDDR6 500ドル 299ドル 201ドル
RX 9060 XT 16GB 16GB GDDR6 620ドル 349ドル 271ドル

16GB版と8GB版のMSRP超過額の差は、RTX 5060 Tiで210ドル、RX 9060 XTでは70ドルとなった。10か国平均でも、RTX 5060 Ti 16GBはMSRP比+69%で約300ドルの上乗せだったのに対し、8GB版は+24%で100ドル未満にとどまる。一方、RX 9060 XTは16GB版が+58%で約200ドル、8GB版が+46%で約140ドルだった。容量が8GB異なることによる価格上乗せの差は、RadeonよりGeForceの方が大きい。

ただし、RTX 5060 TiはGDDR7、RX 9060 XTはGDDR6を採用しており、メモリ規格が異なる。TrendForceの公表資料には両規格の具体的な単価がないため、210ドルと70ドルの差のうち、どの程度がメモリ原価の違いによるものかは判断できない。また、米国の最安値は調査対象となる製品の入れ替わりによって変動する可能性がある。

16GB製品の価格をメーカー別に比較しても違いがある。TechSpotによると、RadeonではRX 9060 XT 16GBのMSRP超過額が約200ドル、上位のRX 9070 XTでも216ドルとほぼ同水準だった。対照的にGeForceはRTX 5060 Ti 16GBで300ドルを超え、上位モデルほど超過額が大きくなる。12GBのRTX 5070でさえ、260ドル以上の上乗せが見られた。ただし、RadeonとGeForceではメモリ規格が異なるため、単純な比較はできない。

一方、10月単月の値上がり率では異なる傾向が見られる。10か国平均でRX 9060 XT 16GBは前月比17%上昇し、RTX 5060 Ti 16GBの7%を上回った。RX 9070 XTの12%もRTX 5070 Tiの8%より大きいが、RTX 5080は22%上昇している。TechSpotはRTX 5090を除けばRadeonの方がGeForceより値上がりしたと総括しており、この傾向が続けば、発売時からの累積的な価格上昇に見られるメーカー間の差が縮む可能性もある。

日本の最安表示は米国MSRPの円換算額の1.78〜3.46倍

日本国内の価格も確認した。価格.comのビデオカード一覧でモデル名を検索し、価格の安い順に並べたところ、2026年11月3日時点の税込最安表示はRTX 5090が119万8,000円、RTX 5080が33万1,800円、RTX 5070 Tiが23万800円だった。いずれも製品名にモデル名を含む出品の中での最安表示であり、在庫の有無までは確認していない。

比較の基準には、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した10月30日のニューヨーク正午時点の為替相場、1ドル=157.47円を使用した。米ドル建てMSRPを円換算し、消費税10%を加えると、RTX 5090は約34万6,300円、RTX 5080は約17万3,000円、RTX 5070 Tiは約12万9,700円となる。これは編集部が設定した比較用の基準であり、NVIDIAが日本市場向けに発表した正式な販売価格ではない。

この基準と価格.comの最安表示を比べると、RTX 5090は約3.46倍、RTX 5080は約1.92倍、RTX 5070 Tiは約1.78倍となった。MSRPからの上昇率では、それぞれ+246%、+92%、+78%に相当する。米国の上昇率(+370%、+120%、+67%)と比較すると、RTX 5090とRTX 5080は日本の方が低く、RTX 5070 Tiは日本の方が高い。TechSpotの10か国平均(+262%、+77%、+60%)と比べても、RTX 5090はやや低い一方、ほかの2機種は上回っており、日本市場が一律に割高とはいえない。参考までに、米国のRTX 5090の最安値9,400ドルは、同じ為替レートで約148万円となる(売上税を除く)。

ただし、これらの比較には注意が必要だ。価格.comの数字は在庫を確認していない表示価格であり、TechSpotの在庫確認済み最安値とは条件が異なる。また、製品名にモデル名が含まれない出品は検索結果から漏れる可能性があり、国内市場全体の最安値とは限らない。取得日も11月3日で、TechSpotによる10月の調査とは時点が異なる。

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DRAM不足は2027年に拡大する見通し、NVIDIAの決算からGeForceの実態は見えない

メモリ価格の上昇圧力は今後も続くと予想されている。TrendForceは9月30日、2026年第4四半期の汎用DRAM契約価格が前期比10〜15%上昇するとの見通しを示した。また、7月30日の発表では、2026年のDRAM需給充足率を約−1〜−2%と見積もり、2027年には需要の伸びが供給能力の拡大を上回って需給逼迫がさらに強まると予測している。ただし、公表資料にはグラフィックスカード1枚あたりのメモリ原価を計算できる具体的な単価がなく、今回の値上がりのうち、メモリ原価で説明できる金額は算出できない。

NVIDIAの決算資料からも、GeForce単体の価格動向を把握することは難しい。同社は5月20日に公表した2027会計年度第1四半期から、市場別売上高の開示を「Data Center」と「Edge Computing」の2区分に変更した。Edge ComputingにはPCやゲーム機、ワークステーションに加え、AI-RAN基地局、ロボティクス、自動車なども含まれる。第1四半期の売上高は64億ドルで、最高財務責任者(CFO)のコメンタリーでは、Blackwellを採用したワークステーション製品の需要拡大が増収を牽引する一方、消費者向けPCの需要はメモリやシステムの価格上昇で鈍化したと説明している。8月26日に発表した第2四半期決算(7月26日終了)では、全社売上高が962億ドル、Edge Computingは前年同期比27%増の72億ドルとなった。

GeForceの業績に最も近い情報は、会計上の報告セグメントであるGraphics部門の開示だ。2027会計年度第2四半期のForm 10-Qによると、GeForceと企業向けワークステーションGPUを含む同部門の売上高は79億2,200万ドルで、前年同期比46%増加した。営業利益も38億9,900万ドルと、前年同期の22億4,200万ドルから74%増えている。NVIDIAはBlackwell製品の販売が増収につながったと説明しているが、GeForce単体の売上高、販売数量、平均販売価格は開示していない。そのため、増収が価格上昇と販売数量の増加のどちらによるものかも分からない。なお、今回確認した資料は10-Q、決算発表文、CFOのコメンタリーであり、決算説明会の発言までは検証していない。

AMDも事情は似ている。同社の2026年第2四半期(6月27日終了)のGaming部門売上高は7億7,900万ドルで、前年同期比31%減少した。しかし、主因はゲーム機向けセミカスタム製品の売上減少であり、Radeon単体の需給はこの数字から判断できない。供給面でも、NVIDIAのFisherは生産能力が「やや制約されている」と認めたものの、具体的な数値は明らかにしていない。

メモリの需給逼迫が2027年まで続くのであれば、原価が短期間で下がることは期待しにくい。それだけに、同じメモリを搭載する機種間の価格差が、今後の市場動向を見極める手がかりとなる。RTX 5070 TiとRTX 5060 Ti 16GBのMSRP超過額の差である140ドルや、RTX 5080との差である840ドルが今後縮小すれば、上位モデルの価格に含まれるメモリ以外の要因が弱まった可能性がある。反対に差が拡大し続けるなら、上位GeForceの価格動向はメモリ市場の需給だけでは説明できないことになる。NVIDIAの決算開示では把握できない実売価格の変化を追ううえで、TechSpotによる10か国の継続調査は重要な判断材料となる。