韓国取引所(KRX)は2026年7月28日と29日、KOSPIとKOSDAQの両市場で第1段階のサーキットブレーカーを発動した。現地経済紙のSeoul Economic Dailyによれば、KOSPIで2営業日連続となるのは初めてで、KOSDAQでは2008年、2020年に続く3回目だ。

急落を「AIバブル崩壊」と呼ぶ見方も出ている。だが29日朝、半導体大手SK hynixが発表した4〜6月期の売上高と営業利益は、いずれも四半期として過去最高だった。好決算でも株価が下がることはある。すでに織り込まれた期待がさらに高ければ、過去最高益は売りを止める材料にならないからだ。

今回の値動きから確実に読み取れるのは、AI需要が消えたことではない。半導体2社への指数集中が進み、短期間で膨らんだ単一銘柄レバレッジ商品について、韓国の金融当局自身が変動性を増幅する経路を警戒していたという市場構造である。

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8%安で20分停止、再開までの10分は別工程

KRXの開示を時系列で並べると、最初の発動は28日10時13分43秒のKOSPIだった。指数は前日終値の6,755.75から8.02%安い6,213.51まで下落した。同日12時1分12秒にはKOSDAQも前日比8.09%安の702.91で発動条件に達した。翌29日のKRX通知が前日終値として示した値は、KOSPIが6,023.66、KOSDAQが705.85であり、前日比ではそれぞれ10.84%安、7.72%安となる。

翌29日も売りは止まらなかった。KOSDAQは12時19分12秒に8.05%安の649.00、KOSPIは12時32分32秒に8.15%安の5,532.33となり、第1段階が再び発動した。4件とも、前日終値から8%以上安い状態が1分間続いたことによる市場全体の停止である。

制度の中身は「30分間の取引停止」ではない。第1段階では売買を20分間止め、停止中は既存注文の取消しのみ受け付ける。その後10分間の単一価格競売で注文を集め、価格を決めてから連続売買へ戻る。20分の停止と10分の再開手続きを合わせれば30分だが、KRX規則上の停止時間は20分である。

下落が深まれば、第2段階は15%以上安かつ第1段階の発動値からさらに1%以上安い状態が1分続いた時点で発動し、再び20分停止する。20%以上安かつ第2段階の発動値からさらに1%以上下がれば、第3段階として当日の取引を終了する。

先物価格の急変を受けてプログラム売買の呼び値を5分間止める「サイドカー」は別の制度だ。サーキットブレーカーは市場全体を止める。二つを分けると、28〜29日に複数の安全装置が相次いで作動したことと、各装置が止めた注文の範囲が見えやすくなる。

SK hynixの営業利益は6.57倍、それでも市場の売りは止まらなかった

29日にSK hynixが公表した4〜6月期の売上高は79兆3,187億ウォン、営業利益は60兆5,426億ウォンだった。前年同期比で売上高は257%増、営業利益は557%増であり、営業利益は前年の9兆2,129億ウォンから6.57倍に膨らんだ。AIサーバー向け高性能メモリとDRAM、NANDの価格上昇が寄与した。

事業の先行指標も、需要崩壊とは距離がある。SK hynixは主要顧客を含む10社超との長期供給契約交渉を完了し、HBM4は第2四半期に量産出荷を開始したと説明している。下期には生産を本格的に増やす計画だ。もっとも、決算値は監査前である。契約条件の詳細も開示されておらず、将来の出荷数量や価格への効果までは確認できない。

株価は利益の絶対額ではなく、決算前の期待との差で動く。投資家がさらに高い利益や株主還元を見込んでいれば、過去最高という見出しと売り反応は両立する。ここへ指数の偏りが重なる。金融委員会(FSC)の資料では、Samsung ElectronicsとSK hynixがKOSPI時価総額に占める割合は2025年末の34%から2026年4月末に41%、5月26日に49%、7月15日には52%へ上昇した。

半導体2社の時価総額がKOSPI全体の半分を超える市場では、両社の評価修正が指数全体へ波及しやすい。今回のサーキットブレーカーは、韓国の上場企業が一斉に同じ業績悪化へ陥ったことを示すものではない。AI期待を受けた上昇が、指数を少数銘柄の値動きに敏感な状態へ変えていた点が重要である。

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5月開始の単一銘柄レバレッジ商品、7週間で11.9兆ウォン

もう一つの論点は、2026年5月27日に韓国で始まった単一銘柄レバレッジETF・ETNだ。FSCによると、16商品の時価総額は開始日の4.4兆ウォンから7月15日に11.9兆ウォンへ増えた。売買代金も10.4兆ウォンから13.0兆ウォンへ拡大した。Samsung ElectronicsとSK hynixの年率換算ボラティリティは、5月26日から7月10日まででそれぞれ96%113%に達していた。

日次2倍型の商品は、基礎となる株価の「その日」の騰落率の2倍を目指し、日々の持ち高を調整する。大幅な値動きの後に倍率を合わせ直す売買が引け前へ集中すれば、現物株やデリバティブの需給を通じ、終盤の値動きを増幅する可能性がある。FSCは28日の業界会合でこの経路を明示し、運用会社へリバランス時点の分散を求めた。一方で、時点を前倒しすれば商品の追随誤差が広がり得るとも認めている。

当局の対応は暴落後に突然始まったものではない。FSCは7月16日、単一銘柄のレバレッジ、インバース、カバードコール商品の新規上場と、既存商品の広告・販促イベントを暫定停止した。最低預託金を従来の1,000万ウォンから現金3,000万ウォンへ引き上げる措置は、28日の発表で7月31日から実施する予定へ前倒しされた。事前教育の1時間追加と評価強化は早期実施、乖離率管理の強化は8月19日の実施予定である。

需要が沈静化しなければ、投資経験要件や個人別の投資上限も検討するという。ただし、これは準備中の選択肢で、施行済みの規制ではない。また、レバレッジ商品の急増とリバランスの仕組みは「変動を増幅し得る」ことを説明するが、2日間の下落を単独で起こした証拠にはならない。当局の表現も原因認定ではなく、増幅への懸念にとどまる。

「AIバブル崩壊」を判定するには実需の悪化が足りない

今回の急落が示したのは、AI相場の強気な期待が崩れれば、少数の半導体株への集中とレバレッジが指数の下げを大きくし得ることだ。SK hynixの過去最高益はAI需要が現に存在する証拠である。同時に、その利益が株価に織り込まれた評価を正当化するかは別の問いとなる。

AIバブルの崩壊を実体面から判断するには、HBMの出荷数量と価格、顧客の設備投資、長期契約の撤回、在庫の積み上がり、受注キャンセルを継続して確認する必要がある。市場構造の面では、単一銘柄レバレッジ商品の残高、引け前のリバランス、Samsung ElectronicsとSK hynixの指数比率が確認対象となる。

2営業日の急落だけでAI需要の終わりは証明できない。だが、最高益でも買い手が戻らず、安全装置が連日作動した事実は、韓国株の上昇を支えてきた期待と持ち高の偏りが、下落を増幅し得る状態にあった可能性を映している。次の決算の利益額より先に見るべきなのは、その利益を生む実需が伸び続けるかと、同じ期待に賭ける資金がどれほど残っているかである。