Appleの量販ノートMacにも世界的なメモリ不足が及んだと、Bloombergが報じた。TechCrunchが2026年8月2日に米Apple Storeを確認すると、MacBook Airの配送予定は多くの構成で8月後半、一部では9月まで延びていた。BloombergのMark Gurman記者も、小売店の在庫が従来より厳しくなったと報じている。6月に200ドルの値上げへ踏み切った後も納期が伸びた事実は、価格転嫁だけで需給を均衡させる難しさを物語る。

ただし、Appleは現在の納期延長を特定の部品と結び付けて説明していない。同社が公式に認めているのは、メモリとストレージの急騰が6月の価格改定を招いたという点までだ。MacBook Airの品薄とメモリ不足の因果はBloombergの報道に基づくため、M5チップや物流など別の制約が重なっている可能性は残る。その留保を置いても、DRAM市場の数字は一般向けPCが置かれた厳しい環境をはっきり映している。

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1,099ドルから1,299ドル、そして9月配送

M5 MacBook Airは2026年3月、13インチが1,099ドル、15インチが1,299ドルで登場した。標準メモリは16GBのまま、SSDを256GBから512GBへ倍増させた製品である。ところがAppleは6月25日、13インチの開始価格を1,299ドルへ引き上げた。同じ16GB512GB構成で200ドル、率にして18.2%の上昇となる。

時点 13インチの開始価格 標準構成 状況
2025年3月、M4 999ドル 16GB256GB 16GBを標準化
2026年3月、M5 1,099ドル 16GB512GB SSD容量を倍増
2026年6月25日、価格改定 1,299ドル 16GB512GB 200ドル値上げ
2026年8月2日 1,299ドル 16GB512GB 多くが8月後半、一部が9月配送

2025年のM4発売時と比べれば300ドル高いが、その間に標準SSDが倍増している。メモリ不足による価格変化を測るうえでは、M5発売時からの200ドル上昇がより近い比較となる。Appleの現行構成では24GBへの増量に200ドル32GBには400ドルが加算されるため、容量を必要とする利用者ほどメモリ相場の影響を受けやすい。

M5は153GB/sのメモリ帯域を持ち、M4比で28%高速化した。CPU、GPU、Neural Engineが同じユニファイドメモリを共有する設計は、大きなオンデバイスAIモデルを動かす際に効率がよい。一方で、購入後に増設できないため、メモリ容量は購入時の価格へ直接響く。構成ごとに在庫差がある局面では、容量の選択が納期にも影響しうる。

HBMは22%のウェハー投入で9%のビット

AIデータセンターが求める広帯域メモリ、HBMは、PC向けDRAMと無関係な別市場ではない。両者は同じメーカーのクリーンルーム、製造装置、ウェハー投入を奪い合う。SamsungSK hynixMicronは収益性の高いHBMと大容量サーバーDRAMを優先し、その分だけ一般的なPCやスマートフォン向けの供給を増やしにくくなる。

TrendForceの推計では、HBMは2026年にDRAM全体のウェハー投入量の22%を使う一方、供給ビット数では9%を占める。HBMはダイが大きく、複数枚のDRAMを積層するため、同じウェハー面積から市場へ出せる総ビット量が少ない。2027年には投入量の30%、ビット数の13%へ上がる見通しで、AI向け需要が伸びるほど通常DRAMの数量制約が強まる。

価格はすでにその差を反映している。通常DRAMの契約価格は2026年第1四半期に前四半期比93〜98%上昇し、第2四半期も58〜63%上昇するとTrendForceは予測した。スマートフォンや薄型PCで使われる低消費電力DRAMの指標では、LPDDR5Xの平均販売価格が第2四半期に78〜83%上昇するとの見通しも示された。AppleはM5 MacBook Airのメモリ規格や供給元を開示していない。この数字を搭載部品の価格とは同一視できないが、低消費電力DRAM市場の価格環境を示す指標にはなる。

供給側の集中もAppleの選択肢を狭める。2026年第1四半期のDRAM売上高シェアはSamsungが38.5%、SK hynixが28.8%、Micronが22.4%で、上位3社だけで89.7%に達した。大規模に調達するAppleであっても、この3社がそろってAI向けへ能力を振り向ければ、別の大手へ注文を移すだけでは数量を確保できない。

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ほぼ2倍の全社棚卸資産、Mac売上高は28.7%増

Appleは不足を傍観していたわけではない。2026年6月27日時点の棚卸資産は110億9,200万ドルで、2025年9月27日の57億1,800万ドルから94.0%増えた。ここには完成品やメモリ以外の部材も含まれる。内訳と増加理由は開示されておらず、メモリ不足への備えだったとは判断できない。

需要も強かった。同四半期のMac売上高は103億5,200万ドルで、前年同期の80億4,600万ドルから28.7%増え、6月四半期として過去最高になった。強い需要は供給調整を難しくする一因になり得る。ただし、Mac全体の売上高から、値上げ後のMacBook Airに長い納期が残る原因までは特定できない。

この局面でAppleが取り得る策は、価格と製品構成を変えつつ、調達量や販売地域への配分も細かく動かすことである。例年6月だった米国のBack to School施策は2026年には7月へ遅れ、MacBook Airには在庫次第との注意書きが付いたと報じられた。Appleは延期理由を公表しておらず、供給調整との因果は確認できない。

中国製メモリは即効薬になるのか

供給元を増やす動きも進む。Financial Timesは、Appleが中国向け端末への採用を念頭に、中国DRAMメーカーCXMTの製品を試験していると報じた。Bloomberg Lawは、CXMT製DRAMに加えてYMTC製NANDの調達も検討し、承認を得るため働きかけていると伝えている。上位3社への集中を緩められれば、数量確保と価格交渉の両面で意味を持つ。

もっとも、試験から量産採用までは距離がある。Appleの品質認定、必要な数量での安定供給、製品設計との適合に加え、CXMTとYMTCをめぐる米中規制も越えなければならない。報道が対象としているのは主に中国で販売する端末であり、MacBook Airへの採用や中国国外への展開を裏付ける情報はない。当面は世界供給を一気に増やす手段より、中国市場の調達を分離して既存供給を他地域へ回す可能性として見る方が妥当だ。

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2027〜2028年まで残る工場の時間差

メモリメーカーは巨額の増産投資を始めているが、新しいクリーンルームは発注翌日に稼働しない。Micronは2026年度に250億ドル超を設備投資へ回す一方、米アイダホ州の新工場による初期生産を2027年半ば、台湾・銅鑼の既存工場からの追加出荷を2028年度と見込む。シンガポールのHBM後工程も意味のある規模になるのは2027年、新NAND工場は2028年後半の予定である。同社自身がDRAMとNANDの逼迫は2026年以降も続くとみている。

供給不足はメーカーに記録的な利益をもたらした。Micronの2026年度第3四半期は売上高414億5,600万ドル、GAAP粗利益率84.6%に達し、Mobile and Client部門の粗利益率は87%だった。この収益は増産資金になるが、工場建設と装置導入の時間を短縮するものではない。PCメーカーは少なくとも新規能力が立ち上がるまで、限られたビットをAIサーバーと分け合うことになる。

MacBook Airの納期が新工場の稼働を待たず正常化するなら、Appleが供給配分の変更、代替部材の認定、需要調整のいずれかに成功した可能性が高い。反対に、標準構成と24GB32GB構成の納期差が広がり、次世代モデルでも価格が上がるなら、メモリ制約は製品戦略へ深く入り込んだと判断できる。値上げはすでに起きた。次に表れるのは、容量の選択肢、発売時期、地域ごとの在庫という、価格表からは見えにくい調整である。