南亜科技(Nanya Technology)は8月5日、新工場「Fab 5A」への設備投資について、最大3,466億台湾ドルの予算を取締役会で承認した。2026年分の支出を含む上限額で、段階的に4年以内に実行し、月間3万5,900枚のウェハー投入能力を目標にする。新しい工場計画をゼロから始める発表でもない。既存のFab 5A計画のどの範囲に資金を配分し、どの水準の投入能力を狙うかを具体化した決議である。

同日、同社は2026年の設備投資予算も最大520億台湾ドルから最大697億台湾ドルへ引き上げた。増額分は177億台湾ドルで、一部装置の前払いを通じてFab 5Aの能力立ち上げを早めるためとしている。予算の上限が実際の支出額を意味するわけではない。また、資金源として開示したのは内部資金、銀行借入、その他の資金調達手段であり、資金調達の完了を示す発表でもない。

7月の説明資料で示された第2四半期末のネットキャッシュは1,984億台湾ドルだった。Fab 5Aの3,466億台湾ドルという予算上限、四半期末のネットキャッシュ、開示された資金源はそれぞれ別の情報である。会社は資金源として内部資金、銀行借入、その他の資金調達手段を挙げている。これは資金不足の表明ではないが、投資額の大きさを読む際に、承認額と手元資金を同じ数字として扱わないための基準になる。

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Fab 5Aの予算が示す3万5,900 WSPM

今回の3,466億台湾ドルは、新Fab 5Aで月3万5,900 WSPMを目指す範囲の予算上限である。WSPMはwafer starts per month、すなわち月間に製造工程へ投入するウェハー枚数を指す。DRAMのビット生産量、完成チップの出荷量、売上高を直接表す数字ではない。

この点は、7月10日の投資家向け説明資料にある別の数字と分けて読む必要がある。同資料では第1段階として2028年に3万WSPMへ立ち上げる計画を示し、建設費を含む総設備投資計画として4万5,000 WSPM、総額160億ドルを掲げていた。8月5日の決議は、この広い総計画と同額・同範囲ではない。3万5,900 WSPMを対象にしたFab 5Aの予算と、2026年に必要な資金を定めたものだ。

2022年6月の起工式で同社は、Fab 5Aを約3,000億台湾ドル、3段階で約4万5,000 WSPMへ拡張する構想として発表していた。専用のEUV棟を設け、10nm級の1Aから1Dまでの世代を扱う計画で、建設は2025年の完了を予定していた。今回の決議は、この旧計画を新設したのではなく、公開されていた構想を予算と投入能力の単位で更新するものだ。

520億から697億台湾ドルへ、前払いで装置を確保

2026年の設備投資予算は520億台湾ドルから697億台湾ドルへ増えたが、この697億台湾ドルをFab 5A全体の費用とみなすことはできない。前払いの対象は一部の装置であり、会社は能力構築を加速する目的を挙げた。3,466億台湾ドルのFab 5A予算、2026年の697億台湾ドルの年度予算、160億ドルの4万5,000 WSPM総計画は、それぞれ対象範囲が異なる。

工場の進捗についても、2022年と2026年の公表内容には境界がある。2022年の資料では、建設を2025年に完了する予定だった。2026年第1四半期の決算発表は、装置据え付けを2027年第1四半期に予定している。会社は工程が変わった理由を、この資料群では説明していない。

したがって、8月の予算決議から初回生産の月や、3万5,900 WSPMに達する暦上の日付までは導けない。決議は4年以内の段階実行を定める一方で、工程ごとの投入開始時期や製品別の能力配分を開示していない。2028年の3万WSPMは投資家向け資料で示した第1段階の目標であり、3万5,900 WSPMの達成時期そのものではない。

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EUVは開発計画で、量産開始の宣言ではない

南亜科技は7月の資料で、1C、1D、1Eの開発が予定どおり進んでいると説明した。EUVも開発対象に含まれる。第1四半期の決算発表でも、1C、1DとEUVの開発は当初計画どおりとしている。ここで示されているのは開発の進捗であり、量産の開始を意味しない。歩留まりや顧客認定、商用出荷も確認できない。

EUVは13.5nmの光を用い、回路パターンをウェハーへ描くリソグラフィー方式である。ただし、EUVを開発計画に含めることは、装置の型番や台数、納入日、どの世代で採用するかを示すものではない。南亜科技の10nm級という表記も、ロジック半導体のファウンドリー世代と同じ物理的な意味へ置き換えるべきではない。

投資が量産能力につながるかを判断するには、開発工程と工場ランプをつなぐ条件が残る。2027年第1四半期の装置据え付け予定、実際のウェハー投入の開始、製品構成と顧客認定の日程は、今回の公式発表では明らかになっていない。

AI需要へ段階的に能力を積む

同社の7月資料では、AIインフラとサーバー関連製品が売上高の20%超を占めるとした。今後数四半期は供給逼迫が続く見通しも示し、AIおよび汎用サーバーがHBMとRDIMMの需要を押し上げ、スマートフォンとPC、自動車、コンシューマー向けの供給を制約するとの見方を記した。複数年のLTAは、需給見通しを合わせる手段として説明されている。

ただし、この売上構成はFab 5AがAI向けメモリやHBMだけを生産する根拠にはならない。公式資料は、各段階での製品構成や顧客を開示していない。7月の説明資料にある2028年3万WSPMと、8月決議の3万5,900 WSPM・4年以内の段階実行を合わせると、能力を段階的に積み上げる計画として読める。

Fab 5Aが計画どおり能力を積み上げられるかは、承認額の大きさだけでは判定できない。2027年第1四半期の装置据え付けから、2028年の3万WSPM立ち上げへ進めるかが第一の確認点になる。次に、開発中の1C、1D、1Eをどの製品で量産へ結び付けるかを見る。EUVの採用段階も確認点だ。