Intelが米国時間2026年10月29日に発表した7〜9月期決算では、データセンター・AI部門(DCAI)が営業利益30億3900万ドルを計上した。これは全社の営業利益25億2200万ドルを上回る数字だ。Intelの営業黒字は、DCAIが稼いだ利益で半導体受託製造事業のIntel Foundryや本社部門の費用を補う構造になっている。ただし、DCAIの営業利益と全社の営業利益の比率は前年同期より低下しており、収益構造には改善も見られる。
売上高は21%増、成長を牽引したDCAIは78%増収
Intelの公式決算発表によると、2026年7〜9月期の売上高は165億1300万ドルで、前年同期比21%増加した。米国会計基準(GAAP)に基づく営業利益は25億2200万ドルとなり、前年同期の6億8300万ドルから約3.7倍に拡大した。非GAAPの希薄化後1株当たり利益(EPS)は0.52ドルだった。続く10〜12月期については、売上高150億〜160億ドル、非GAAP EPSを0.25ドルと予想している。
事業部門別に見ると、成長を牽引したのはDCAIだ。売上高は73億1800万ドルと前年同期比78%増加した一方、PC向け製品を中心とするClient Computing and Physical AI Group(CCPG)の売上高は80億9700万ドルで、5%減少した。Intel Foundryの売上高は66億9700万ドルと58%増加したが、ここにはIntel社内の他部門向けの製造取引が含まれているため、すべてを外部顧客からの売上と捉えることはできない。
CFOのDavid Zinsner氏は、今回の決算について、データセンター事業が過去15年間で最も高い売上成長率を記録したと説明した。一方で、PC市場の低迷は少なくとも2027年前半まで続くとの見方を示している。CEOの陳立武(Lip-Bu Tan)氏も、Xeonプロセッサーへの極めて強い需要に応えるため、供給能力の拡大を当面の最優先課題に挙げた。サーバー向けCPUの需要が拡大する一方、PC向け製品の販売環境は厳しさを増している。
Intelは7月の決算説明会でも、メモリ価格の上昇と供給制約を背景に、2026年通年のPC市場が10%台前半の縮小になると予想していた。CPUそのものの需要だけでなく、メモリなど周辺部品の価格や供給状況がPC市場全体の動向に影響している。日本の消費者にとっても、今後のPC価格や搭載メモリ容量の変化を考えるうえで重要な要素となる。
DCAIの営業利益は全社を上回り、他部門の赤字を補う
今回の決算で特に注目されるのは、DCAI単独の営業利益がIntel全社の営業利益を上回ったことだ。2026年7〜9月期の部門別営業利益を前年同期と比較すると、利益の構成が大きく変化していることが分かる。
| 部門 | 2026年7〜9月期(億ドル) | 2025年7〜9月期(億ドル) |
|---|---|---|
| CCPG(PC・エッジ) | 22.85 | 26.94 |
| DCAI(データセンター・AI) | 30.39 | 9.64 |
| Intel Foundry | −18.53 | −23.21 |
| All Other | 1.79 | 1.00 |
| 本社の未配分費用 | −10.58 | −7.82 |
| 部門間取引の消去・調整 | −0.70 | 0.28 |
| 全社営業利益 | 25.22 | 6.83 |
DCAIの営業利益30億3900万ドルは、全社の営業利益25億2200万ドルの約1.20倍に相当する。言い換えれば、DCAIの利益を除いた全社の営業損益は5億1700万ドルの赤字になる。CCPGも22億8500万ドルの営業利益を確保しているが、Intel Foundryの営業損失18億5300万ドルと本社の未配分費用10億5800万ドルを合計すると、約29億1100万ドルのマイナスとなる。PC事業の利益だけではこれらを補いきれず、DCAIの収益が全社の黒字を支えている構図だ。
DCAIの収益性も大幅に改善した。営業利益を売上高で割った営業利益率は41.5%となり、前年同期の23.4%から18.1パーセントポイント上昇した。売上高が78%増加する間に営業利益は約3.2倍に拡大しており、増収額約32億ドルに対する増益額20億7500万ドルの比率は約65%に達する。これは売上の増加に伴って利益が大きく伸びたことを意味するが、この比率をそのまま現金の創出力や今後の利益率として扱うことはできない。
一方、Intel Foundryの営業損失は前年同期の23億2100万ドルから18億5300万ドルへ縮小した。ただし、同部門の売上高66億9700万ドルを評価する際には、社内取引の影響に注意が必要だ。Intel全社では約62億9100万ドルの部門間売上が連結決算上で消去されている。この消去額にはFoundry以外の部門間取引も含まれるため、Foundryの売上高から単純に差し引いて外部売上高を算出することはできない。
参考になるのが、Intelの2026年4〜6月期の四半期報告書だ。同四半期のFoundryの外部売上高は2億9300万ドルにとどまっていた。Foundryの収益規模を評価するには、Intel社内向けの製造と外部顧客からの受注を分けて見る必要がある。今回の営業損失の縮小は改善を示すものの、それだけで外部顧客向けの受託製造事業が採算を確保できる段階に達したとは判断できない。
Intelは半導体製造への投資も拡大している。7〜9月期の設備投資額は42億1900万ドルで、前年同期の29億5600万ドルから約43%増加した。同社は7月の時点で2026年通年の設備投資見通しを200億ドル超に引き上げており、製造能力の増強を進めている。また、今回の決算では約230億ドルの公募増資を完了したことも報告した。こうした資金調達と設備投資は、今後の生産能力拡大を支える一方、投資に見合う収益を継続的に確保できるかという課題も残している。
DCAIへの依存度は低下、それでも黒字を支える構造は変わらず
DCAIの利益が全社の黒字を支えているという見方に対しては、依存度がすでに低下し始めているという反論も成り立つ。DCAIの営業利益を全社の営業利益で割った倍率は、2025年7〜9月期の1.41倍、2026年4〜6月期の1.38倍から、今回の1.20倍へと低下した。これはDCAIの利益が減ったためではない。DCAIの営業利益は大幅に拡大したが、Foundryの損失縮小などによって全社の営業利益も改善したため、相対的な倍率が下がった。
Foundryの改善には、製造コストの低下も関係している。Intelは7月の決算説明会で、Intel 18Aプロセスで製造する「Panther Lake」の主力モデルについて、年初から製造コストを約50%削減したと説明した。製造歩留まりや生産効率の改善が進んでいることを示す数字であり、Foundryの損失縮小を考えるうえでも重要な材料となる。ただし、特定製品の製造コストが下がったことと、Foundry事業全体が黒字化することは別の問題だ。
それでも、現時点ではDCAIが全社の営業黒字を支えているという見立ては維持できる。倍率が1を上回り、DCAIを除くと全社の営業損益が赤字になるためだ。ただし、前年同期とは利益の構成が大きく異なる。
2025年7〜9月期のDCAIの営業利益は9億6400万ドルで、Foundryの営業損失23億2100万ドルと本社の未配分費用7億8200万ドルの合計31億300万ドルに対し、約31%にとどまっていた。当時はCCPGが26億9400万ドルの営業利益を確保しており、PC事業が利益の大きな柱だった。これに対し、2026年7〜9月期はDCAIの営業利益30億3900万ドルが、Foundryの損失と本社の未配分費用の合計29億1100万ドルを1億2800万ドル上回った。赤字を補う役割の中心が、PC事業からデータセンター事業へと移ったことが分かる。
もっとも、DCAIの高い営業利益率が今後も続く保証はない。Intelは7月の時点で、サーバー向けCPUの供給制約が当面続くとの見方を示しており、4〜6月期の粗利益率が予想を上回った要因の一つに価格施策を挙げていた。供給が限られるなかで得られた高い利益率が、増産によって需給が緩和した後も維持されるかは不明だ。また、本社の未配分費用は前年同期の7億8200万ドルから10億5800万ドルへ増加している。ただし、2026年4〜6月期の14億1600万ドルと比べれば減少しており、費用面の変化も一方向ではない。
次の10〜12月期の会社予想にも注意が必要だ。売上高の予想範囲は150億〜160億ドルで、中央値の155億ドルは7〜9月期の実績を約6%下回る。非GAAPの粗利益率も、今回の44.1%から38.0%へ6.1パーセントポイント低下する見通しだ。決算発表資料では粗利益率低下の要因が詳しく説明されておらず、部門別の利益がどのように変化するかも明らかになっていない。Intelは7月の段階で、サーバー向け製品の供給拡大が7〜9月期末から10〜12月期に集中するとの見方を示していたが、増産が利益率にどう影響するかは今後の実績を確認する必要がある。
今回の見立てを検証するうえで、最も明確な条件は次の2026年10〜12月期決算にある。全社の営業黒字が続くなかでDCAIの営業利益が全社の営業利益を下回れば、DCAI単独の利益が他部門の損失を補っているという現在の構図は崩れる。Foundryの損失がさらに縮小し、本社費用が横ばいで推移すれば、DCAIの利益が増えなくても倍率が1を下回る可能性はある。
一方、CCPGの営業利益は前年同期の26億9400万ドルから22億8500万ドルへ減少しており、PC市場の低迷が続けば、DCAIへの依存度が再び高まることも考えられる。したがって、次の決算で注目すべきなのはDCAIの利益額だけではない。Foundryの赤字縮小とPC事業の減速がそれぞれどの程度進み、今回の1.20倍という倍率がどちらに動くかが、Intelの収益構造の変化を判断する重要な指標となる。



