ZDNet Koreaは8月11日、韓国・水原で開かれたNGL 2026で、Samsung半導体研究部門のマスターである朴昌民氏が、0.55 NAのHigh-NA EUVを2030年ごろの1nm級A10世代から量産で使う考えを説明したと報じた。
今回の報道が伝えるのは、EUVを使うかどうかではなく、Samsungがどの世代で露光方式を量産工程に組み込むと説明したかである。Samsungは2nmと1.4nmにもHigh-NAを適用したいとしてきたが、現時点では技術面で補うべき点が残るという。Samsung側で研究・工程評価を進める段階と、量産ノードで工程を成立させる段階は違う。
Samsungは2024年、SF1.4を2027年に量産する目標を掲げた。2026年第1四半期の決算でも1.4nmの開発は計画どおり進んでいると説明している。これらの公式情報に、High-NAの量産投入時期は記されていない。今回の報道は、既存の1.4nm開発目標を変更した公式発表ではなく、High-NAの量産投入地点について新たに伝えられた内容として扱うべきだ。
1nm世代からとする報道の意味
NGL 2026は8月10日から11日に開かれた。ZDNet Koreaによれば、朴氏は2nmと1.4nmにHigh-NA EUVを使いたい意向を示しつつ、A10以下の世代で必要になる技術だと説明した。Samsungはパートナー各社と共同開発を進めているという。
High-NAの「導入」は一つの出来事ではない。研究用の露光、材料やマスクを含む工程の評価、量産で使う層の認定はそれぞれ別の仕事になる。今回の発言が示すのは、Samsungが研究や評価を放棄したということではなく、量産投入地点をA10に置くという説明だ。
そのため、1nm級という呼び名をトランジスタの実寸と同一視することもできない。どの配線層やパターンをHigh-NAで露光するのか、装置を何台入れるのか、どの工場で使うのかは公表されていない。A10での量産投入はロードマップ上の到達点であり、今日の量産認定を意味しない。
0.33 NAのマルチパターニングがつなぐ
Samsungの当面の主力は、0.33 NA EUVを使うマルチパターニングである。ZDNet Koreaは、1.4nmから1nm世代にかけてはこの方式が中心となり、その後にHigh-NAを主な手段にする考えだと伝えた。既存のEUV基盤を延ばしながら、より高い開口数の露光機へ移る道筋である。
マルチパターニングでは、微細化したい重要な層を複数回に分けて露光する。単一露光で済ませられない部分を工程の組み合わせで作るため、直近の設備転換を抑えられる。一方で、露光回数と工程のつながりが増える。量産では各工程を積み上げたうえで、重ね合わせを含めて安定させなければならない。
ASMLも、High-NAへの移行はマルチパターニングを単一露光へ置き換え得ることに価値があると説明する。工程数を減らせれば、サイクル時間と欠陥を抑えられる可能性がある。ASMLはコスト、エネルギー、化学薬品と水の使用も減らせるとしている。ただしこれは露光プラットフォームの一般的な利点であって、Samsungの歩留まりやコストを示した数字ではない。
Samsungにとっては、0.33 NAの装置群を使いながら次の露光方式を仕上げる期間にもなる。High-NAへの切り替えを早めれば工程を減らせる可能性がある反面、量産条件が整わなければ工程全体を不安定にする。マルチパターニングを選ぶのは旧世代の技術へ戻ることではない。現行EUVを使って先端ノードを進めるための、時間を買う選択である。
もっとも、High-NAへ移れば既存の0.33 NA EUVが一斉に置き換わるとは限らない。SamsungはA10のどの層にHigh-NAを当てるかを明らかにしておらず、層ごとの使い分けも分からない。単一露光へ移せる層から工程を減らし、それ以外では従来の方式を使う可能性を含め、実際の工程構成は量産認定まで見えてこない。
0.55 NAが量産で効く場所
ASMLのHigh-NA機「TWINSCAN EXE:5200B」は、現行NXE系の0.33から数値開口を0.55へ引き上げる。ASMLは8nmの解像度を掲げ、NXEと比べて単一露光で1.7倍小さい特徴を形成でき、トランジスタ密度を2.9倍まで高められるとしている。
数字だけを見れば、High-NAは次世代ノードの近道に見える。しかし、露光機の光学性能がそのまま工場の成果になるわけではない。Samsungが技術の補完を挙げた背景には、マスクやペリクル、レジストを含む材料と、測定、重ね合わせ、工程統合を量産条件で合わせ込む作業がある。装置の導入台数だけでは判断できない部分だ。
ASMLはHigh-NA EUVを将来のロジックとメモリーの生産へ向けた技術と位置付けている。とはいえ、Samsungの量産工程で問われるのは、High-NAの性能そのものより、単一露光へ置き換えられる層をどこまで認定できるかである。ある層で工程を減らせても、周辺の条件がそろわなければ製品の量産へはつながらない。A10を量産投入地点とする内容は、ZDNet Koreaが報じたSamsung側の説明として示されている。
ASMLはEXEプラットフォームを2025〜2026年の量産対応に結びつけ、2nm級ロジックから同程度の密度を持つメモリーへ広げる構想を示している。つまり、装置メーカーが量産向けの機種を用意する時期と、Samsungが自社の特定層を量産認定する時期は一致しない。ZDNet Koreaが報じた2030年ごろという数字は、High-NAそのものの登場時期ではなく、同報道が示すSamsungのA10量産投入地点を指す。
だからこそ、SamsungがLow-NAのマルチパターニングを使い続けることには意味がある。High-NAの優位性を将来の工程短縮で取りに行く一方、当面のノードは既存EUVの運用を深めて成立させる。露光技術の世代交代と、製品を出すための量産技術は同じ速度では進まない。
公式目標と報道された量産投入地点
SamsungがSFF 2024で示したSF1.4の量産目標は2027年だった。その後の2026年第1四半期決算でも、同社は1.4nm開発を計画どおりとし、大規模な2nm顧客の拡大にも触れている。公式発表の範囲では、High-NAをどのノードで量産投入するかは明かされていなかった。
8月のNGL 2026での発言は、その空白に量産の順番を与えた。ZDNet Koreaは、SF1.4を2029年ごろ、SF1.4+を2030年ごろとする現在のロードマップにも触れている。これらは新しいSamsungの公式プレスリリースではなく、現地取材に基づく報道である。
2024年の公式目標と今回伝えられた日程だけから、開発の成否を即断することはできない。Samsungの公式情報は1.4nm開発の継続を示す一方、High-NAの量産投入日を公表していない。次の焦点は、SamsungがA10の量産時期とHigh-NAの認定範囲を公式に示すかどうかだ。
仮にSamsungがA10でHigh-NAを本格的に使うなら、露光機に加え、周辺工程をそろえなければならない。判断を左右するのはノード名の小ささではなく、認定した層を量産で繰り返し処理できるかどうかだ。2030年ごろのA10投入という報道を評価する際も、この量産認定の範囲と時期が判断材料になる。



