中国のDRAMメーカーCXMT(長鑫科技)について、17nm級と報じられたDDR5の歩留まりが90%を超えたと快科技(MyDrivers)が8月10日に伝えた。CXMT自身の開示ではないが、DDR5が量産品としてどこまで供給に結び付くかを考えるうえで、製造段階の条件が動いた可能性を示す報道である。
ただし、90%という数字をそのまま供給力とは呼べない。測定対象のロットや期間、ウェハー工程の歩留まりなのかパッケージ後の良品率なのかが記事では明らかでないためだ。公式資料で確認できる製品、工場稼働、顧客認証の工程と重ねると、製造上の到達点と市場での採用は分けて追う必要がある。
90%超を報じたが、歩留まりの定義は不明
快科技(MyDrivers)は2026年8月10日、CXMTの17nm DDR5が歩留まり90%を超えたと報じた。同記事は主要PCメーカーが2026年半ば前後までにCXMT製DRAMの認証を終え、一部ノートPCへ少量搭載したとも伝えている。ここでいう17nmや90%超は、いずれも同媒体の報道に基づく表現である。
以前の歩留まりを伝えたのも快科技(MyDrivers)だった。2024年12月の記事では、DDR5の歩留まりは当初40%から80%前後へ改善し、2025年末に90%前後へ達することを目標としていたという。今回の報道が正しければ、少なくともその目標水準に達した可能性がある。
だが、二つの記事を並べても、90%超の中身までは分からない。対象製品がすべてのDDR5なのか、特定のロットなのかも不明であり、業界標準の同一条件で他社と比べられる数字でもない。今回の報道は製造の改善を示すが、監査済みの実績や全製品の平均値として扱う根拠はない。
歩留まりは、どの工程で何を良品と数えるかによって意味が変わる。ウェハー工程での不良だけを数えた値と、テスト、選別、パッケージを通過したダイを数えた値は同じではない。MyDriversの記事は、その母数と測定工程を示していない。そのため、90%超という報道は、製造ラインの状態を読むための出発点であって、ただちに出荷量へ換算できる数値ではない。
公式資料で追えるのは量産品と稼働率
CXMTの製品ページは、16Gbと24GbのDDR5を最高8000Mbpsで掲載し、サーバー、高性能PC、タブレットなどを用途に挙げる。CXMTのIPO向け資料でも、16Gb、24Gb、32GbのDDR5を最高8000Mbpsの量産製品として記載する。公式資料はDDR5を売れる製品群として示すが、17nmという表記や歩留まりの数値は載せていない。
同資料によると、CXMTは2024年末以降、自社DDR4の生産を停止してDDR5へ移行した。2025年の売上構成はDDR系列が31.87%、LPDDR系列が66.43%、その他が1.70%だった。ただし、DDR5単独の売上比率や出荷量は開示されておらず、この構成比からDDR5の供給規模を割り出すことはできない。
IPO向け資料はDDR5量産を、第4世代の自主プロセス技術プラットフォームに基づくものとして説明する。一方で、同資料は17nmという呼び方を用いていない。MyDriversが報じた17nm級DDR5と、公式資料の技術プラットフォームを同じものだと決め付けることもできない。
工場の数字も、歩留まりとは分けて読む必要がある。12インチウェハーライン全体の生産能力利用率は2023年の87.06%から、2024年は92.46%、2025年は95.73%へ上がった。容量ベースでの主要DRAM製品の産販売率は同じ順に99.45%、97.94%、90.67%である。前者は設備をどれだけ動かしたか、後者は生産量に対してどれだけ販売したかを表す値であり、90%超の歩留まりを裏付ける数字ではない。
しかも95.73%は、特定のDDR5製品ではなく12インチウェハーライン全体の稼働率である。90.67%も、DDR5だけを切り出した出荷率ではなく、容量ベースの主要DRAM製品の産販売率だ。公式の高い稼働・販売指標は事業の運転状況を知る手掛かりにはなるが、MyDriversの歩留まり報道と同じ軸で重ねることはできない。 同じ90%台でも、製造能力の稼働率、製品の産販売率、報道された歩留まりは、それぞれ別の対象を指している。
同資料は、2025年第4四半期のOmdiaによる売上高ベースで、CXMTの世界DRAMシェアを7.67%、世界4位、中国1位と記す。これもDDR5の出荷ビットや良品率ではなく、DRAM全体を対象にした売上高の指標だ。数字の母数を混ぜれば、製造の進み具合と市場で売れた量が同じ意味に見えてしまう。
PC採用を左右する認証と地域条件
CXMTの資料では、製品を量産判断へ進めるまでに、工程検証とJEDECの検査、顧客検証、認証を経る流れを説明している。DDR5が量産品に含まれることと、すべてのPCメーカーが全地域・全SKUで採用することの間には、この工程と個別の調達判断がある。容量と速度、モジュール構成が違えば、求められる信頼性検証や地域ごとの調達条件も変わる。採用範囲は一律には決まらない。
MyDriversは、AcerとASUSは中国本土および新興市場向け、HPは中国本土向けにCXMT製DRAMを限定採用し、Dellは全面的に使用しないとしている。同社は認証完了と少量搭載も併記したが、数量、対象SKU、採用期間は示していない。各社の公式発表として確認された内容ではないため、この採用状況は同媒体の報道として受け取るべきだ。
ここに、歩留まりと供給の間に残る差がある。良品率が上がれば、同じウェハー投入量から出荷可能な良品を増やし、単位ビット当たりのコストや供給の安定性を改善し得る。だが実際に市場へ出るビット数は、テストと選別、パッケージを終えた良品の量に、顧客認証と用途別の配分が重なって決まる。
標準規格に沿うDDR5であっても、メモリ容量や速度、モジュールの設計が変われば、PC側で求められる検証は変わる。顧客が認証を終えたという報道も、採用がどの構成へ広がったかまでは答えていない。供給の広がりを測るには、製造側の歩留まりと、製品側で選ばれる構成を同時に見る必要がある。
Micronの公表値は同一条件の比較にはならない
Micronは1γ DRAMについて、1β世代比でウェハー当たりのビット密度を30%以上高め、DDR5で最大9200MT/sを提供すると説明する。同社はEUVを使ったプロセス改善にも言及している。一方、CXMTが公式に掲載するDDR5の上限は8000Mbpsであり、両社の速度値、プロセス、測定条件はそろっていない。
したがって、MyDriversが報じた90%超を、Micronに追い付いた証拠や性能の優劣に置き換えることはできない。Micronの1γはビット密度、速度、EUVを含む技術世代の説明であり、CXMTの報道値は定義が未開示の歩留まりだからだ。両社の数字が答えている問いは違う。
MyDriversが報じた歩留まり90%超が実際の供給力へ変わるのは、同じ定義で複数ロットにわたって数値が続き、テストと選別を経た出荷ビット、地域別SKUでの採用拡大がそれを支えると確認できたときである。



