Reutersは10月28日、中国のメモリメーカーCXMTがHBM3Eのサンプルを国内のAIチップ設計企業に出荷し、2か月以内に限定生産を始める見通しだと報じた。関係者によると、歩留まりは20〜30%にとどまり、SK hynixの約70%を大きく下回る。同じ数量を投入する際の費用が等しいと仮定すると、良品1個あたりの製造費はSK hynixの2.3〜3.5倍になる計算だ。それでもCXMTが生産を進める背景には、中国のAIチップメーカーが増産に必要な先端メモリを十分に確保できない事情がある。製造費が高くても、国内で調達できること自体が大きな価値を持つと考えられる。

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歩留まり20〜30%は製造費にどれほど影響するのか

Reutersによると、CXMTは標準仕様の製品と、歩留まりの改善を目指して設計を変更した改良版の2種類を顧客に提供した。ただし、試験で確認された性能はSK hynixのHBM3Eよりも、旧世代のHBM3に近かったという。歩留まりの低さから、製造費は海外メーカーの同等品より高くなる見通しで、不良品の多くは廃棄するか、手直しが必要になる。それでもCXMTは、先端メモリの調達に苦しむ中国のAIチップメーカーへの供給を目指し、生産を進める方針だ。

歩留まりとは、製造工程に投入した製品のうち、良品として出荷できる割合を指す。例えば、同じ100個を投入した場合、SK hynixの歩留まりが約70%なら良品は約70個だが、CXMTの20〜30%では20〜30個しか得られない。投入1個あたりの製造費が同じなら、良品1個あたりの費用はCXMTがSK hynixの約2.3〜3.5倍になる。これは70÷30と70÷20で求めた倍率であり、両社の投入単価が等しいという仮定に基づく単純計算だ。

注意したいのは、歩留まりの数値そのものにも不確実性がある点だ。Reutersが伝えた数字は関係者から得た情報であり、CXMTが公式に公表したものではない。また、SK hynixの約70%がどの製品や積層数を対象とするのか、両社の歩留まりが同じ工程範囲を指しているのかも確認できていない。実際の製造費には、投入単価の違いや手直しによって回収できる製品の割合なども影響するため、2.3〜3.5倍という数字を両社の実際の製造原価の差とみなすことはできない。

HBMは複数のDRAMチップを垂直に積み重ねて製造するため、工程が進むほど不良品による損失が大きくなりやすい。日本のアドバンテストは2023年11月の技術説明資料で、HBMでは積層後にも追加の検査工程が必要となり、テスターの需要が増えると説明している。積層後の検査で不合格となった製品は、手直しできなければ、それまでに投入した材料費や加工費が無駄になる。歩留まりが低いメーカーは、こうした損失を販売価格に転嫁するか、自社で負担しなければならない。

なお、当サイトが9月10日に紹介したChosunBizの報道では、CXMTの8層HBM3の歩留まりは約25%とされていた。今回報じられた20〜30%はHBM3Eに関する数字であり、対象製品が異なるため、歩留まりが改善していないと断定することはできない。

製造費が高くても生産を進める背景には、中国の調達難がある

Reutersは9月、Huawei、Cambricon、MetaX、Iluvatar CoreXの4社が、現行および次世代のAIチップ製品を20〜50%値上げしたと報じた。メモリ価格の上昇が生産拡大の障害になっているという。同報道によると、米国の輸出規制が強化されて以降、中国の半導体メーカーは高価なグレーマーケットのHBMに依存するようになっている。

こうした状況では、AIチップメーカーにとって、メモリの調達価格だけでなく、必要な数量を確保できるかどうかが重要になる。HBMを確保できなければAIアクセラレーターを完成・出荷できず、各社はすでにメモリ価格の上昇を理由に製品価格を引き上げている。そのため、製造費が海外メーカーより高くても、安定して入手できる国産HBMは有力な選択肢になりうる。ただし、CXMTの販売価格は報じられておらず、製造費の高さを販売価格に転嫁するのか、自社で吸収するのかは不明だ。現段階で説明できるのは、CXMTが低い歩留まりにもかかわらず生産を進める経済的な動機であり、顧客企業にとって実際に有利な調達先になるかどうかは別の問題である。

CXMTが歩留まりの改善を目指した改良版も顧客に提供していることから、限定生産を通じて製造工程を改善しながら、供給実績を積み上げる狙いがあると考えられる。Reutersによると、CXMTは2024年にはHBMの社内開発に着手していた。開発開始からサンプル出荷までに約2年を要した計算になる。

一方、SK hynixは2024年9月に12層HBM3Eの量産開始を発表している。今回のCXMT製HBM3Eについては積層数が報じられておらず、製品の仕様や製造難度を単純に比較することはできない。それでも、SK hynixの量産発表からCXMTの限定生産開始見込みまでには約2年の開きがある。中国メーカーが先行企業との差を縮めるには、今後も製造技術と歩留まりの改善を進める必要がある。

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性能面の課題と、年末までに確認すべき指標

CXMT製HBM3Eの採用を考えるうえで、最大の懸念材料となるのが性能だ。Reutersによると、顧客による試験では、CXMT製品の性能はSK hynixのHBM3Eよりも旧世代のHBM3に近かった。ただし、CXMTはHBM3Eのメモリ帯域幅などの具体的な性能値を公表しておらず、どの程度の差があるのかは分かっていない。

比較の目安となるのが、JEDECが2022年に策定したHBM3規格だ。HBM3の規格上の最大データ転送速度はピン当たり6.4Gb/sで、1デバイスあたりの最大帯域幅は819GB/sとなる。一方、SK hynixが2024年に量産を開始した12層HBM3Eの動作速度は、ピン当たり9.6Gb/sだ。両者の速度比は1.5倍であり、同じ1024ビット幅のインターフェースを前提に換算すると、9.6Gb/sでは約1.23TB/sの帯域幅に相当する。

CXMT製品が具体的にどの程度の転送速度を達成しているかは不明だ。AIアクセラレーターでは、メモリ帯域幅が不足すると演算器へのデータ供給が追いつかず、本来の演算性能を十分に引き出せない可能性がある。調達できる製品があることと、顧客の性能要件を満たして実際に採用されることは、分けて考える必要がある。

それでも、先端メモリの入手が難しい中国市場では、海外メーカーの製品に性能面で及ばなくても、国内で調達できるHBMを評価し、供給実績を積み重ねる意義は大きい。今回の見立てが当てはまるのは、まず限定生産に進む理由についてであり、本格的な量産や商用製品への採用まで保証するものではない。

実際にどのAIチップに搭載されるのかも、現時点では確認できていない。当サイトが9月1日に紹介したThe Informationの8月31日付報道によると、T-HeadとCambriconはCXMT製HBM3Eを自社プロセッサーと組み合わせる採用試験を進めている。試験が順調に進めば2027年から搭載するという条件付きの計画であり、量産製品への採用が決まったわけではない。なお、Cambriconは9月にAIチップの値上げが報じられた4社のうちの1社でもある。

今回の見立てが崩れる条件は二つある。一つは、Reutersが示した「2か月以内」という期間、すなわち2026年末ごろまでに限定生産の開始を確認できないことだ。もう一つは、サンプルを受け取った設計企業が、性能や品質などを理由に採用を見送ったと報じられることである。

今後の進展を測るうえでは、歩留まりの改善も重要な指標になる。SK hynixの歩留まり約70%を基準にすると、同じ投入単価を仮定した場合、CXMTの良品1個あたりの製造費がSK hynixの2倍を下回るには、歩留まりが35%を超える必要がある(70÷2=35)。改良版でこの水準を超えたことが確認されれば、製造コスト面での不利が縮小したと評価できるだろう。ただし、実際の採用には性能や品質、供給量、販売価格なども影響する。CXMTが限定生産を予定どおり開始できるか、そして顧客の要求を満たす製品を安定供給できるかが、国産HBMを一時的な調達難への対応策から、継続的な供給源へと発展させられるかを左右する。