Fubon Researchが、Googleは2028年に第9世代TPUを1200万〜1500万個確保する計画だとの推定を示した。最大値は同社が予測するNVIDIAの同年のデータセンター向けAI GPU出荷数を上回る。ただし、Googleが公表済みなのは第8世代までで、この数量も第9世代の仕様も公式発表ではない。見えてきた変化は、GoogleがTPUを自社サービスの計算基盤から顧客向けシステム販売へ広げ始めたことだ。製造・実装能力を複数社から確保する方向にあるとの見方は、Fubonの推定とThe Informationの報道に基づく。
最大1500万個はGoogleの公式目標ではない
Fubonが7月30日に公開した調査ノートの抜粋によると、Googleは2028年に1200万〜1500万個のTPUを「持つ」計画だという。第9世代品は4個の演算ダイで構成され、2028年に消費する生産能力は2027年の2倍を超えるとの見方も示された。レンジには300万個の幅があり、Fubon自身もTSMCとIntelへの詳しい割り当ては把握していないとしている。
ここで「持つ」は、2028年中に全量を新規生産し、外部へ販売するという意味ではない。Googleのデータセンターで使う分、Google Cloud経由で顧客に提供する分、顧客の設備へ納入するTPUシステムが混在し得る。1200万〜1500万個は発注確約や出荷実績ではなく、アナリストによる計画の推定として読む必要がある。
Googleが4月に発表した最新製品は、第8世代の学習向け「TPU 8t」と推論向け「TPU 8i」で、一般提供は2026年後半の予定だ。同社はTPUの設計を数年前から進めると説明しており、2028年向けの供給計画がすでに動いていても不自然ではない。一方、第9世代という名称や投入時期はもちろん、4ダイ構成と数量もGoogleから明らかにされていない。
1500万TPU対1240万GPUという比較の盲点
Fubonは、NVIDIAのデータセンター向けAI GPU出荷数が2026年の820万個から2028年には1240万個へ増えると推定する。Google側の上限1500万個はこれを上回るが、両者の「1個」は同じ物差しでは測れない。
Googleの第8世代だけを見ても、8tと8iは役割が分かれている。8tのSuperpodは9600チップを束ね、共有HBM 2PBと121 ExaFLOPSの演算性能を備える。一方の8iは1チップ当たり288GBのHBMと19.2Tb/sのチップ間接続を持ち、推論の費用対効果を狙う設計だ。世代と用途に加え、メモリ容量やネットワーク構成が異なれば、個数から学習能力や推論処理量を直接比較することはできない。
販売形態も違う。NVIDIAの数字は商用GPUの出荷推定であるのに対し、Googleの数字は自社利用、クラウド提供、システム販売を合わせた保有計画とみられる。Alphabetは2026年第2四半期、限定的なTPUシステム供給契約から売上計上を始めた。契約先は、特殊な大規模ワークロード向けのオンプレミス基盤を必要とするか、そうした基盤を提供する顧客だ。収益の大半は2027年に認識する予定だという。したがって1500万個が実現しても、そのままNVIDIAと同規模の外販売上や市場シェアを意味しない。
それでも戦略上の影響は大きい。GoogleがAI需要の相当部分を自社設計チップで賄えれば、計算能力の増設を外部GPUの供給だけに委ねずに済む。比較すべきなのは個数の順位より、Googleが自社サービスと外部顧客の双方へどれだけの稼働容量を供給できるかだ。
Fubonが推定する4ダイ構成とTSMC・Intelの役割
Fubonの見立てどおり第9世代が4演算ダイ構成になるなら、供給能力を左右するのはロジックウェハーの枚数に限らない。4個の良品ダイをHBMとともに一つのパッケージへ収めるには、基板、接続技術、テストまで含む先端パッケージ工程が必要になる。ダイ寸法、製造工程、歩留まりは不明であり、必要な能力を数量から逆算することはできない。
TSMCは2026年の設備投資を600億〜640億ドルへ引き上げ、その10〜20%を先端パッケージ、テスト、マスクなどへ振り向ける。台湾では先端工程と先端パッケージの工場13棟を今後数年で建設する計画だ。同社は能力増強計画にボトルネックは見込まないと説明する一方、先端技術の開発から量産立ち上げまでは5年以上かかるとも述べている。これはGoogle向けの割当が足りるとの保証ではない。
Intelを巡っては、The Informationが6月、Googleが数カ月にわたり先端パッケージ技術を試した後、2028年分として300万個超のTPUを発注したと関係者情報で報じた。GoogleとIntelは公表していない。IntelのEMIBは、パッケージ基板に埋め込んだ小型シリコンブリッジでロジック同士やロジックとHBMをつなぐ2.5D技術で、外部企業のシリコンを使った量産実績もある。
ただし、Intelへの発注報道から、TPUのロジック前工程までTSMCから移るとは断定できない。ウェハー製造、先端パッケージ、テストの具体的な分担は非公開である。Googleにとって現実的なのは、TSMCかIntelかを一社に決めることではなく、工程ごとに供給源を増やし、一カ所の制約が全体を止めない構成を作ることだろう。
需要は見えた、残る制約は電力と実装
大規模な需要を裏づける材料はすでにある。Anthropicは2025年10月、最大100万個のTPUへアクセスし、2026年中に1GWを大きく上回る容量が稼働する計画を発表した。2026年4月にはGoogle、Broadcomと複数GW規模の次世代TPU容量を契約し、2027年から稼働させると明らかにしている。これはチップ数と電力を一対一で結びつける数字ではないが、Googleが自社モデル以外にも大口需要を抱えることを示す。
Alphabetの2026年第2四半期の設備投資は449億ドル、上期では806億ドルに達した。主な用途はサーバーとデータセンターを含む技術インフラであり、TPUだけの金額ではない。Google自身も第8世代TPUの発表で、データセンターではチップ供給と同じく電力が制約になると説明し、第4世代の液冷設備を組み合わせている。
2028年の1500万個を検証する手掛かりは段階的に現れる。まず2026年後半の8tと8iの一般提供、次に2027年のTPUシステム売上とAnthropic向け容量の立ち上がり、そして第9世代とIntelの担当範囲に関する公式開示だ。大量のチップを用意しても、HBMやパッケージに加え、冷却・電力・データセンターが同じ時間軸でそろわなければ稼働容量にはならない。Fubonの推定が問うているのは、NVIDIAとの個数競争よりも、Googleが2028年までにこの一連の供給網を束ねられるかどうかである。



