Samsung Electronicsが、生成AI(人工知能)市場の勢力図を塗り替える決定的な一手を打とうとしている。同社は2026年2月後半、世界初となる第6世代高帯域幅メモリ「HBM4」の量産を開始する。この新型チップは、NVIDIAが年内に投入を予定している次世代AIアクセラレータVera Rubin」に搭載される予定であり、これまでSK hynixの後塵を拝してきたSamsungにとって、メモリ市場の主導権を奪還するための極めて重要な戦略製品となる。

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NVIDIAの最終検証を突破した「1c」プロセスの衝撃

SamsungのHBM4が注目を集めている最大の理由は、その圧倒的なスペックと、競合他社に先駆けた量産タイミングにある。業界関係者によると、SamsungのHBM4はすでにNVIDIAによる最終的な品質検証テストを通過し、正式な発注を受けている。量産は今月中に開始され、旧正月明けの2月第3週にも最初の出荷が開始される見通しだ。

今回のHBM4において、Samsungは「1c」と呼ばれる第6世代10nm級DRAMプロセスを採用した。これに対し、現在市場シェアで首位を走るSK hynixは、実績のある「1b(第5世代10nm級)」プロセスをベースにHBM4を構成する戦略を採っている。Samsungは、より微細化が進んだ1cプロセスを投入することで、ピンあたり11.7Gbpsという業界最高水準のデータ転送速度を実現した。

この技術的選択は、リスクとリターンの両面を孕んでいる。微細化が進むほど歩留まり(良品率)の確保は困難になるが、一度軌道に乗れば、チップの性能と電力効率の両面で競合を突き放すことができる。Samsungは「設計変更なしで顧客の要求性能を上回るサンプルを提供できた」と自信をのぞかせており、技術力での優位性を強調している。

「Vera Rubin」が求める22TB/sの圧倒的帯域幅

NVIDIAがHBM4の早期導入を急ぐ背景には、同社の新アーキテクチャ「Vera Rubin」の驚異的な要求性能がある。現行の「Blackwell」アーキテクチャ(B200など)が第5世代のHBM3Eを採用しているのに対し、RubinはHBM4を前提に設計されている。

Rubinプラットフォームのフラッグシップである「R100」GPUは、1基あたり288GBという巨大なHBM4メモリを搭載し、メモリ帯域幅は毎秒22TB(テラバイト)に達する。これはBlackwell世代の8TB/sと比較して約2.75倍の向上であり、AIモデルの巨大化に伴う「メモリの壁」を打破するための必須条件となっている。

HBM4のもう一つの大きな変革は、メモリスタックの最下層にある「ベースダイ」の進化だ。HBM3Eまではメモリ専用プロセスで製造されていたが、HBM4からはロジックプロセスが採用される。Samsungはこのベースダイに自社の4nmファウンドリ工程を適用する見込みであり、メモリとロジックを垂直統合できる自社の強みを最大限に活かそうとしている。これにより、メモリ内部での簡易的な演算処理やエラー訂正の高度化が可能になり、システム全体の電力効率が劇的に向上する。

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SK hynixとの「シェア争奪戦」第2幕

これまで、AI用メモリ市場はSK hynixの独壇場だった。同社はNVIDIAとの強固な協力関係を背景に、HBM3およびHBM3Eの供給で圧倒的なシェアを確保してきた。しかし、HBM4世代においては、Samsungが量産時期で先んじることで、その構図に変化が生じている。

市場調査によると、NVIDIAの初期HBM4発注分において、SK hynixが50%台半ばのシェアを維持する一方、Samsungも20%台半ばを確保し、Micronと激しく競り合っている。SK hynixは「長年培った量産経験とMR-MUF(Mass Reflow Molded Underfill)技術による安定性」を武器にするが、Samsungは「世界最大の生産キャパシティ」と「最新プロセスによる性能向上」で対抗する構えだ。

特にSamsungは、2026年中にHBMの生産能力を現在の月産17万枚から25万枚へと、約50%引き上げる計画を立てている。平沢(ピョンテク)の第4工場(P4)に新設されるDRAMラインが、この増産を支える屋台骨となる。

2026年:メモリ業界の「黄金時代」へ

SamsungのHBM4量産は、単なる一企業の新製品投入に留まらない。それは、Google(Alphabet)やAmazonといったハイパースケーラーたちが独自に進めるAIアクセラレータ開発にも波及している。これらの企業も、自社の将来的なAIインフラにSamsungのHBM4を採用することを検討しており、供給先はNVIDIA以外にも広がりを見せている。

2026年は、従来型のDRAM価格の回復と、高付加価値なHBM4の量産が重なる「メモリ業界の黄金期」になると予測されている。Samsungは、2026年のHBM関連収益が前年比で3倍以上に急増すると予測しており、半導体部門(DS部門)の年間営業利益が100兆ウォン(約11兆円)を超えるとの強気な見通しも出ている。

AIの進化が「計算能力」から「データの移動速度(帯域幅)」へとボトルネックを移す中で、HBM4はもはや単なる記憶装置ではなく、AIシステムの性能を決定づける「心臓部」の一部となった。Samsungが今月踏み出す量産への一歩は、同社が再び世界の半導体技術の頂点に返り咲くか、あるいはSK hynixの牙城を崩せずに終わるか、その分岐点となるだろう。


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